夢の男

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  ――ぶるっ 先程より大きな身震いがして気付いた。 「トイレ行きたい……」 少し先にパンを買ったコンビニがあるが、もう帰りのバス代しかお財布に入っていない。 トイレだけ借りるのは恥ずかしい…… 歩幅を縮めて歩く速度を早くする。 しかし一度気付いた尿意は確実に膀胱を圧迫し、焦りで心拍数は急上昇。 不穏な圧迫感に落ち着きを無くしたその視界に路地の暗がりが映った。 そこは通り向かいのビルとお店の間。 ゴミを捨てる青いポリタンクの向こうまで行けば、こちらからは殆ど目立たなくなる細い道。 三度目の身震いがして傘を握る手に力がこもる。 限界が近かった。 一瞬 躊躇したが辺りに誰も居ないのを確認すると、点滅の横断歩道を走って路地へと入っていった。
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