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その雅の言葉を聞き、
悠「わかりました。が、言っておきます。」
悠はそこで一旦言葉を切り、雅の方を向いてから、
悠「この条件の話をした際、律樹くんはその条件を強く拒否したんですよ。」
そう言った。
雅「・・・・・・・・・。」
雅は悠の言葉に驚き、何も言葉が出ず目を見開いた。
悠「この条件で良いと言われたのはさっきです。それもあれだけあなたにひどい事を言われても『これが解放のための代償なんですよね。』と言っていました。とてもすがすがしいという顔ではありませんでしたね。」
雅の顔を見て悠は付け加えるようにそう言った。
雅「そんなこと・・・。」
雅がそこまで言った所で、
鈴「『あるわけない』とどうして言い切れるんですか?律樹くんがひどい仕打ちを今まで我慢していたのかさっき本人の口から直接聞きましたよね。すべてはあなたがもとの厳しいけれど自分の事を愛してくれていた父親にいつか戻ってくれると信じていたからですよ。」
鈴が追い討ちをかけるようにそう言った。
雅「くっ・・・。」
雅は片手で両目を隠し、何かを耐えるように肩をふるわせた。
悠「そう願っていたのは律樹くんだけではありません。変わってしまう前のあなたを知っている社員の人達は必死で会社を守ろうと動いています。あなたがいつか元に戻ると信じて。だからこそ、低いながらも立て直せると判断したとプロの方は言っていましたよ。」
悠のこの言葉に、
雅「うっ・・・う・・・。」
雅は頭の中に律樹の顔、社員の顔、今まで関わった人物の顔、そしてそれらの人から受けた忠告や静止の声、その人達への自分の態度を思い浮かべ、涙を堪えることができなくなり、嗚咽を零した。
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