走れメランコリー

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  ある晴れた秋の日、季節外れの転校生がやってきた。 女の子だ。 美人ではないけど小さな姿勢の良い鼻を飾るそばかすは愛嬌がある。 明るい自己紹介の後でニッコリと笑った輝きはクラスの皆に魔法をかけた。 クセのある軽やかなブロンドヘアーが耳を隠し、その子だけの秩序に従って肩の上でふわりと揺れた。 都会から父親の転勤で、この田舎に引っ越してきたという。 僕は教室の一番後ろの席だったが、その子が歩くと春風が舞うような、爽やかで暖かな空気が教室を満たすようだった。 彼女の席は僕の隣になった。 「よ、よろしく」 「よろしくね」 初めての挨拶は緊張してぎこちないものだった。 チアのリーダーだったという彼女は、もちろんここでもチア部に入った。 まっすぐ帰る僕は、学校が終わると時々図書室に行って窓際に座る。 体育館にはクリアで大きな窓が沢山ついていて、ここからよく見えるのだ。 彼女の笑顔は距離を隔てても何故か僕の目にはっきりと届いた。
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