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「いったぁ…」
尻餅をついた俺は、ぶつかったのが少女だったことに気づいた。
が、少女の方は無言だった。
「すみません。大丈夫ですか?」
俺は慌てて、立ち上がり少女が立つのを手伝った。
顔をあげたとき、ふと少女と目が合った。それは、きれいに整った顔立ちで清楚な同い年ぐらいの少女だった。胸元には月をかたどった、ブルーのネックレス。
「あの、あなたも大丈夫ですか?」
ぼーっとしていると、ふいに少女が話かけてきた。
「あっ、だ、大丈夫です!すみません。俺が前を見てなかったから。」
「いえ、私の方こそ。ぼーっとしていたみたいで、すみません。」
少女は服の砂を落とすと、笑顔でそう言った。
「そうですか。ケガがなくて良かった~。あっ、俺ちょっと急いでいるので、すみませんがこれで失礼します。」
俺は少女のことが気になったが、人を待たせているから見とれるわけにはいかない、とまた走り出した。
少女はしばらく、走り去る勇人の後ろ姿を見続けていた。
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