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「良かった……」
しかし沈黙をカヤが先に破る。
「解決しそうで良かったです。これで村の皆も安心出来る」
「そうか」
素っ気なく答えてから、妖怪はカヤに改めて告げた。
「それはそうと、何故お前は井戸に近付こうとしない」
突如カヤは目を見開き、硬直する。
「それが……どうかなさいました?」
表情は固まったままだが、カヤは答えて見せる。しかし言葉を告げる唇は震え、顔色も徐々に青ざめて行く。
そんなカヤの様子を、妖怪はしばらく黙って眺めていた。
やがてカヤの顔が死人の如く血が引けてから、ようやく妖怪は口を開く。
「いいや、すまない」
妖怪の言葉を受け、カヤはただ呆然としていた。
そんなカヤに、妖怪はそれ以上は何も言わなかった。ただ立ち尽くすカヤを見守っている。
そんなカヤも、やがて踵を返してその場から消えて行く。
妖怪はその背を追わず、振り返って再び井戸の方を向いた。
そしてそのまま、日が落ちるのを待った。
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