序章

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 そこは山奥の小さな村。  雪が溶け、野には青く小さな花が咲く時季。桜はまだ蕾のまま。 「うぅっ……さむっ」  春に入りかけた夜の外は、まだ幾らか霜の降りるなか、十ばかりの坊主の少年が茶碗や皿を洗う為に井戸から水を汲もうとした。  少年は井戸に桶を投げ込む。 「……………………?」  しかし、少年は異変に気が付いた。  井戸に投げ込んだ桶が水に落ちる音が帰って来ないのだ。  少年は井戸の中を覗く。  村の大人達には、危ないから井戸を覗くなと釘を刺されていたが、少年はその時そんな事を全く気に留めていなかった。  その時だった。 「わ!」  悲鳴と共に、少年は井戸に落ちてしまった。
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