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顔には狐の面をし、体に黒い一枚布を纏う異質な存在感を出すその人物は森を歩いていた。
人々に妖怪と忌み嫌われるその者は人目を避け、山々を転々としていた。
その日もいつもの通り、妖怪は山道に沿って進んで行く。
木々が茂り、春先の強い風を浴びながら妖怪が歩いていると、やがて森が開けて来る。
林が終わり、開けたその先には畑が広がっていた。
その一帯は、高原特有の葉物の野菜が植えられていた。
畑の作物を眺めながら辻を歩んでいると、その先に村が見えてくる。
妖怪は一度迂回して村を避けようかと考えたが、そこでふとあることに気が付いた。
妙だ。まだ日が登ってすぐだというのに、人一人畑に出ていない。
異変を感じながら、違和感に似た不快感を胸に残して、妖怪は再び歩み始めた。
その足は、妙な雰囲気を醸し出す村の中へと向けられていた。
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