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「そこの御仁」
妖怪が声を掛けると、女は怪訝な目で妖怪を見つめた。
「……旅の御方?」
か細い声で、小豆色の着物を着た声に似た細い目をした女は、小首を傾げて聞き返した。
「そんな所だ。して、あれは一体何があったんだ?」
「昨夜、あそこの夫婦のお子さんが井戸に落ちて溺れたそうで……。もう、何人もあの井戸に落ちて、溺れているんです」
「何人も?」
妖怪はその言葉を怪訝に思った。
「詳しく訊かせてはくれんか」
「ええ……良いですけど、立ち話もなんですし家に寄って行きませんか?」
「ああ、忝ないな」
「ではこちらへ」
妖怪は女に連れられ、村の隅にある家まで案内された。
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