キリ番100号:Kinoさん

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バイトが休みだったその日、俺は昼過ぎまで寝ていた。 もしアパートのインターホンが鳴らなかったら、もっと長く寝ていたと思う。 新聞の勧誘かとシカトを決め込んだら、出てこない俺に苛立ったのか、外の人間はドアをがんがん叩き始めた。 女の声が音の合間に聞こえてくる。 「雄一ぃ!あんた今日バイト休みだからいるんでしょお!開けなさいよっ」 その声の持ち主が誰だかわかった途端、俺は何も聞かなかったことにしようと本気で考えた。 だがしかし、このまま叩かせていたら近隣の皆様へのご迷惑になるだろう。俺はしがないフリーターだが、人様に迷惑をかけることは大嫌いなのだ。適度な常識人だともいえる。 仕方なく俺はインナーの上にジャージをひっかけ、ドアを開けてやることにした。 非常識で迷惑きわまりない、世界で一番苦手な、姉貴のために。
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