Prologue

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少年には生れつき魔力がなかった。 少年は魔力のない自分を恨み、魔力、才能のある人間を妬んだ。 辺り一面茂った場所にぽつねんと立ち尽くし、俯く。 数ヶ月前までは幼なじみの少女がいたが、今は中月とかという才能も魔力もあり、優秀且つ顔が整った少年の所で遊んでいるのだろう。 当たり前だ。 自分は魔力も才能も無くて、顔も冴えない奴なのだから。 少年は溜息を漏らし、この夜空を見上げた。 何時もの景色。 少年の世界はどんどん変わっていくのに、この夜空は、この夜空だけはなにも変わらない。 いや、変わっているのだろうけど、少なくとも、少年にはそう思えるのだ。 自分と同じなにも変わらない存在。 それだけが少年の支えであり救いだった。 けれど。 それは逃避だと少年は薄々感じていた。 少しで良い。ほんの少しで良いから変わりたい。 そんな時。 「--ねぇ、そこの小学生。こんな夜遅くに、しかもそんな所でなにしてんの?もしかして修業とか?ばっかだねー餓鬼の癖して」 いつの間にか背後に立っていた女性によって、少年は一歩前進することになる。
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