QuestⅠ~アスガルド~

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おばちゃんの熱い思いを頬に感じながら俺はハローワークを後にした。 「おぉ! アオ殿!」 そんな俺を呼ぶ声が聞こえる。 この世界で俺の名前を呼ぶのは、あの二人だけだ。 「ぶはははは! 無事転職は済まされましたかの?」 「攻撃目標補足。隔離結界展開準備。座標設定開始………」 何が面白いのか笑いながら話しかけるこの男。 ベッドにすれば大人が大の字で寝転がれそうなほど大きな盾を持った大男。 鍛え上げられた体に、牛の様に太い首。 顔面にまで筋肉ついてんのか? と思わせるゴツゴツとした顔をしている。 煉瓦色の髪と髭が顔をぐるりと包み込み、まるで鬣(たてがみ)のようなそれは獅子を連想させる。 彼の名前は名をドルボ。 雪山で出会えば間違いなくビッグフットと間違えるだろう男。 もう一人の俺を見るなり物騒な事を呟き出した女の子。 彼女の名はミーカ。 吊り上がった目尻と眉は、攻撃的に見えるが、これが彼女の地顔らしい。 ショートカットの黒髪は「俺好みで、是非嫁に来ていただきたい」 「ぶわはっ!? よかったのぅミーカ! アオ殿がお前を嫁に貰ってくださるらしいぞ」 しまった。つい口に出ていたようだ。 「座標設定完了。隔離結界展開」 瞬間、俺を中心にして円状の魔力の壁が現れる。 彼女は結界師という職らしく、色々なことが出来るらしい。 このように特定の相手を隔離したりね。 そして俺は彼女に嫌われている。間違いなく。
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