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「好きだよ」
――そんな言葉、おまえは誰にでも言っているんだろう?
「好き、好きなんだよハイネ…」
やつは俺を後ろからぎゅっと抱き締めながら泣きそうな声で言った。不覚にもときめきそうになる。
正直、聞きたくない。
「……だから、もうどこにも行くなよ…」
「…るさいっ!」
「ハイネ…」
ああ、もう大嫌いだっ!
でもこいつと離れたくない……ジレンマを抱えているとわかっていても、こいつがいないのはもっと嫌だ。
「ハイネ……」
やつの手が服の下に入ってきた。ゾクゾクする。
「や、め…」
「ないよ? ハイネ…こっち見てよ」
やつは俺の顎に手を添え当て、顔の向きを変えようとしたが、俺は意地を張って抵抗をした。やつの顔なんざ見たくない。
「……っ」
「ハイネ…どうして素直になってくれないんだよ…」
「俺は素直だ! おまえの方こそ素直になった方がいいんじゃないか!?」
「…どういうことだよ」
「見たんだよ。おまえが他の女と楽しそうに抱き合っているところを。ついこの間は顔を真っ赤にしながら俺にあんなこと言ってきたくせに……ずいぶんと気持ちの切り替えが早いんだな」
「……」
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