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保孝は集められた押収品を眺めていた。
沢山の虫が入った大きい瓶がある。
「これがハンミョウか」
瓶を覗きこみ、興味津々でみていた保孝に、鑑識の毒物班員が注意した。
「触らないで下さい。もし毒粉を吸い込みでもしたら、たちまち死にますよ」
「ヒエエエエエ!」
保孝は慌てて、瓶から離れた。
鑑識課員は説明した。
「毒成分はこの虫の体重のわずか1、2%。数匹分の毒で致死量です。数グラムの毒粉が皮膚に付着しただけで、たちまち腫れあがります」
「何て恐ろしいものを集めたんだ」
保孝は身震いした。
「これからどうやって毒を出すのですか?」
「すり潰して粉にします。それを飲み物へ混入したのでしょう」
保孝は立河が夜な夜な虫をすりこぎですり潰す光景を思い浮かべた。
―ゴリゴリゴリ。
まるで怪談だ。
よくぞ自分が触れたり吸い込んだりしなかったものだ。
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