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志摩が机を片づけていると、引き出しの中に立河から志摩へ宛てた手紙を見つけた。
『何が書いてあるのかしら』
緊張しながら中を読んだ。
―志摩。僕は君に嘘を吐いた。半年前に結婚したと言ったけれど、本当は結婚していない。君を愛しているという言葉に嘘はない。君を悲しませる事をして、本当に悪かった。
君との交際はとても楽しくて、このまま復讐を忘れようかと思った事もある。でもそれはどうしても出来なかった。
知花さんの最後の姿を、悔しさを、どうしても忘れられなかった。
人を殺したら、必ず報いを受ける。それはあの四人に対して、そして僕自身に対して言いたい事だ。
僕は愚か者だ。でも後悔しない。
君との結婚を夢見た事がない訳じゃないけれど、君の夫は僕ではない。君の幸せはここではなく、きっと実家にあると思う。
どうか僕の事は忘れ、家に戻り、同じ整備士の人と結婚して、家業を継いで幸せになって欲しい。僕からの最後のお願いだ。
志摩、君と過ごした日々は本当に幸せだったよ。本当にありがとう。
この手紙は絶対焼いてくれ。立河宏信―
志摩は何度も指で涙を拭(ぬぐ)って読んだ。
立河は放っておいた父からの手紙を読んだのだろう。
自分こそ、父の手紙も写真も、さっさと焼いて捨てるべきだった。
きちんと片づけない、ずぼらな自分をせめた。
志摩は泣きながら、立河の手紙を燃やした。
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