帰途

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契約途中で終了となった脇田と間宮二人も一緒の船で帰る事になった。 「リストラにあったよ。客は全員引き揚げるから、バイトはクビだ」 「いい給料だったのになあ。あてが外れた」 こちらもガッカリしている。 間宮は海原を見ながら志摩の言葉を思い浮かべた。 「若さでぶつかれ」「愛は障害を越える」 背中を押された気がした。 『戻ったら那津子さんへ告白しようか』 『となると脇田さんへ伝えたほうがいいだろうか?』 間宮は隣の脇田へ言った。 「脇田さん・・・」 「何だ?」 「いえ、何も・・・」 やはり言うのは恥ずかしかった。 「言いかけてやめられたら気持ち悪いだろ。最後まで言えよ」 「向こうへ戻ったら打ち明けます」 「それまで内緒?すっごい気になる!」 脇田は思わせぶりな間宮の態度を見て、間宮の中で何かが変わったと感じた。 イズミはヒロと一緒にいる事だけが、今は元気の素だ。 「一度くらい海に行きたかったね。水着は持ってきた?」 「持ってきません」 ヒロは冷たく言った。 「そうか」 ヒロの水着姿は見られないようだ。 こんなに空は青く、日差しは暑いのに、水着にならないなんてもったいない。 イズミは免許が取れなかった事よりも、こちらの方が残念だった。 「監獄島殺人事件」 終わり (ハンミョウに関する記述の参考記事:読売新聞「古今あちこち」磯田道史著) ※間宮の那津子への告白は、別作品で描かれます。
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