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二頭立ての馬車に乗り込むと、真紅のビロード張りの椅子に、藤堂と亮二は並んで腰を下ろした。
馬車が屋敷に向かって走り出す。
暫く重い沈黙が続き、亮二は居心地の悪さに耐えきれずにボソッと切り出した。
『どうしたんだよ。あんな乱暴なこと、藤堂らしくないぞ』
「仕方ないだろ。龍海が関わると俺は、冷静でいられなくなるんだ」
着飾られた亮二を見せびらかすのは楽しいが、うっかり悪い虫を引き寄せないよう注意を怠るわけにはいかない。
亮二自身に危機感がないだけ余計に。
千道の目は本気で、亮二を欲していた。
いつ千道が再び亮二に手を出してくるのか、藤堂は気が気ではなかった。
『でも、暴力はよくないぞ。もし藤堂に何か遭ったら、俺は………』
藤堂は亮二を抱きすくめると、亮二の肩口に、その端正な顔を気まずそうに埋めた。
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