因縁の始まり

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「怒鳴るつもりはなかったんだ」 大きく息を吸って、気持ちを落ち着かせる。 自分の指がいまだに亮二の腕を強く掴んでいることに気づくと、藤堂は慎重な動きでその指を解いた。 「千道は冴島より危険な奴なんだ」 『そうは見えなかったけど……』 「それが千道の手口なんだよ。優しい言葉をかけて相手を油断させ、本性を現す」 『どうして千道って奴のことを、目の敵にすんだ?千道となにか遭ったのか?』 「それは……」 普段は鈍感な亮二の鋭い指摘にギクリとし、藤堂は言葉を詰まらせ反論することができなかった。 藤堂家と千道家は共に長い歴史を誇る名家同士であり、幾代にも渡るライバル同士である。 互いの家系の因縁もあり、藤堂は千道の存在を警戒しているのだ。 やはり、亮二には言っておかなければいけないだろう。 自分が亮二を伴侶として迎えたと知ったら、千道は必ずや亮二に手を出してくるはすだ。
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