因縁の始まり

23/25
前へ
/414ページ
次へ
うっかり亮二を傷つけることのないように。 「龍海、聞いてくれ。藤堂家と千道家の間には…」 「零様、お取り込み中申し訳ありません」 トントンと扉を打つ音に混じり、メイド長の声が部屋の外から響く。 「この話はまた後で」 藤堂は亮二の髪をさらりと梳いて、ガウンを羽織ると扉を開けた。 「零様、晩餐会の招待状が届いてます」 メイド長の瑠奈は一礼して歩み寄ると、手紙をのせた陶製のトレイを恭しく差し出した。 「下がれ」 瑠奈が部屋を出てから、藤堂は封をされた招待状を開いた。 「面倒だな。ったく」 晩餐会の招待状に目を通しながら、藤堂はうんざりと言った具合に溜め息を吐く。 名家の交友を深める晩餐会は、ただの名目であり、名家同士の自慢話が主なのである。 正直、人が多く集まる場所に出向くことが苦手な藤堂が、渋るのも当然なことだ。  
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1318人が本棚に入れています
本棚に追加