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うっかり亮二を傷つけることのないように。
「龍海、聞いてくれ。藤堂家と千道家の間には…」
「零様、お取り込み中申し訳ありません」
トントンと扉を打つ音に混じり、メイド長の声が部屋の外から響く。
「この話はまた後で」
藤堂は亮二の髪をさらりと梳いて、ガウンを羽織ると扉を開けた。
「零様、晩餐会の招待状が届いてます」
メイド長の瑠奈は一礼して歩み寄ると、手紙をのせた陶製のトレイを恭しく差し出した。
「下がれ」
瑠奈が部屋を出てから、藤堂は封をされた招待状を開いた。
「面倒だな。ったく」
晩餐会の招待状に目を通しながら、藤堂はうんざりと言った具合に溜め息を吐く。
名家の交友を深める晩餐会は、ただの名目であり、名家同士の自慢話が主なのである。
正直、人が多く集まる場所に出向くことが苦手な藤堂が、渋るのも当然なことだ。
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