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『これは………』
藤堂が亮二のために用意してくれたのは、黒地に牡丹、金閣箔、貝紫染、王冠絞めの技法を施い、さらに豪華にさらに華やかに創作された着物。
あまりに見事な召し物にまじまじと目を凝らすものの、その帯上げまでもが本絹の総絞りの贅沢な仕様となっている。
これほど豪華な着物を用意されるとは、亮二の開いたロが塞がらない。
そんな亮二を、苦笑を浮かべながら見ていたメイド長の瑠奈は着物を衣絞掛けに大きく拡げ、柄を見せてやる。
そして、畳んであった畳紙を丁寧にゆっくり開くと、亮二に召し変えを促した。
「こちらのお着物は、零様が選んで下さったのですよ」
『藤堂が?』
驚いて、伺うように振り返る亮二に、瑠奈はにこりと笑ってそう言った。
「ええ。亮二様の美しさが映えるようにと、色々と悩んだみたいです」
(藤堂が俺のために……)
嬉しさに、亮二はしばらく着物に触れたまま動けなかった。
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