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(……す、ごい………)
亮二が桜花楼へ訪れるのは、これが初めてのことになる。
広大な桜花楼の中は、煌びやかな出で立ちをした名家らでごった返していた。
今宵、晩餐会が行われるのは桜花楼の中でも、最も格調の高い部屋だ。
亮二はその雰囲気に圧倒され、名家というものが如何なる身分であるか思い知る事となる。
(俺…場違いだよな……)
「どうした。具合いでも悪いのか?」
長い睫を伏せた亮二の肩を、藤堂の掌が包み取る。
『大丈夫。ちょっと緊張しちまって…。こんな場所、初めて来たから』
常に胸に湧く劣等感に、澄んだ声音が苦しく歪む。
男娼だった亮二には、こんな名家が集う会館など不似合いに思えて仕方がない。
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