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「こんばんは。また会いましたね」
『この間は助けていただき、ありがとうございました』
「礼なんて良いんですよ。そう言えば、この間はちゃんと名乗っていませんでしたね。僕は千道蓮司です。貴方は?」
『俺は、龍海亮二です』
「美しい貴方にぴったりの名前ですね。それに今日は一段と美しい。美しい貴方をエスコートできる男が羨ましいですよ」
『え…あ、そんな……』
ふわりと柔らかい笑みを浮かべる千道に、僅かながら亮二の肩の力が抜けた。
────…あと、少し。
あと少しで、亮二の警戒心が解ける。
「それにしても、美しい貴方をほったらかしにして、お相手の男はなにをしているのですか?」
『今、話があるとかで…』
「一人では心許ないでしょうから、僕と一緒にどうです?」
「その必要はない」
にこやかに告げた男の襟へ、恐ろしい速さで藤堂の腕が伸びる。
涼しげな笑みのまま身をひらりと交わし、千道は藤堂の腕から逃れた。
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