因縁の始まり

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「待てよ」 『離っ…』 逃げようとした亮二の腕を、男は力任せに掴み取った。 「逃げんなよ。どっかで見た顔だなって思ったんだよな。あんた、高級色子の藤霞の君だろ!?」 薄い唇を歪め、男が顔を近づける。 「へえ、間近で見るとすげぇ綺麗だな」 生暖かい息が頬に触れ、亮二は気色の悪さに男の躯を押し返した。 『離せよ…』 「良いだろ?男娼なんだから、少しは俺の相手をしてくれたって」 『やめっ!』 暴れた亮二の手から、包まれた牡丹の花が落ちた。 真昼の路上だというのに、亮二たちを見咎める者はいない。 例え気がついたとしても、関わりを避けるため近づきはしないだろう。 『俺はもう、男娼じゃねぇ……』 「男娼だった奴が足を洗ったとしても、その躯は覚えてるもんだぜ」 男は、もがこうとする亮二のくびれた腰に腕を回して引き寄せる。  
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