1317人が本棚に入れています
本棚に追加
/414ページ
(千道には気をつけろ…か…)
千道より、今は藤堂だ。
行き先を告げる書き置きを部屋に残してきたが、こんなに帰りが遅くなってしまったのだ。
きっと、藤堂は心配しているだろう。
だが、ケンカしたままで正直、藤堂と顔を合わせずらい。
このままずっと門の前にいるわけにもいかず、亮二は覚悟を決め、門に手をかけた。
その時。
突然、暗い影が亮二の躯を覆い被さった。
驚いて振り返った亮二の囗元に、薬品で塗られた布が押しつけられた。
『んっ…ふ……』
揮発性の、ツンとした刺激が鼻孔に走る。
意識が遠いていく亮二の躯は、馬車に押し込まれた。
乱暴な音を立てて扉が閉まる。
「早くしろっ」
走り出した馬車の衝撃に躯を揺られながら、亮二は薄れゆく意識の中で藤堂の名前を呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!