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青年の姿を見た瞬間、男は驚愕に大きく双眸を見開き、ぶるりと身を震わせた。
「あ、あんたは…千道さん」
「おや、僕のことをご存知みたいですね。それなら話は早い。この方から手を引いてもらえませんか」
千道というのが、この青年の名前なのだろうか。
薄い唇が、作り物めいた動きで優雅に笑った。
だが、冷たい千道の双眸は、決して笑ってはいない。
「千道さんがそう言うなら…」
「ありがとうございます」
千道が双眸に溜めた笑みを深くする。
その笑みは凍えそうな憎悪の影があり、男はぎょつとして手首を庇いながらその場を後にした。
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