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「大丈夫ですか?」
落ちていた牡丹の花を拾い上げると、千道はそれを亮二へと手渡した。
『はい。すみません、助けていただきありがとうございま……』
下げた顔を上げると、自分を見ているその顔に思わず言葉を呑み込んでしまった。
眼鏡をかけているものの、その眼鏡で端正な容貌が損なわれることはなく、自然と引き込まれてしまう。
暗い茶色のスーツを身に付けた千道は、容貌や仕種の細部に至るまで、全てが洗練されて隙がない。
亮二は気づかなかったが、亮二を見る眼光には涼しげな容貌とは異なる、凶暴な影があった。
「礼には及びませんよ。こんなにも美しい人を助けることが出来たのですから」
『あ……』
初対面の男に向かって、美しい?
甘い台詞に混乱しながら、言葉を探す亮二に、千道はにこりと笑った。
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