登校初日

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すると、ドアが自動で開いた。 ……入れってこと? 入る? 入る。 「失礼……します」 頭を下げて入ると、目の前に人がいた。 びっくり。 黒いスーツのグラサンの人。 先生、と言うよりSPの方が合いそう。 「速やかにクラス、氏名、用件を述べなさい」 「えっと……凩八雲、3日遭難してた」 「あぁ、円谷が言っていた……生徒手帳だったな、これだ」 そう言って、目の前に差し出されたブレスレット。 貰って良いの? 貰う。 「……ありがとう」 「利き手は右だな? 左手首に装着してみなさい」 「はい」 言われた通り嵌め込むと、フッと時間が浮かび上がる。 おぉ、ハイテク……腕時計にもなる。 「時刻の隣のスイッチでモニターを出し、出たモニターで使いたいツールをタッチすれば良い。消す時はexitを押しなさい」 「わかった、ありがとう」 手首のブレスレットを袖の中にしまい、頭を下げる。 「今は……戦闘訓練中だが、まだルールも把握出来ていないようだから、教室に待機していなさい。教室は1年3組だ。見取り図を見ながら行けるな」 「はい」 「では、用が済んだら退室しなさい」 「はい」 1歩、職員室から出れば、直ぐ様ドアは閉まった。 「ハイテク……」 この学校は、便利なものがいっぱいあるみたいだ。 次世代的? よくわからないことを考えると、頭痛い。 変なことを考えるのやめよう。 ヘッドホンを耳に当てて、それから言われた通りに生徒手帳を弄る。 見取り図、見取り図……見取り図、これだ。 モニターに映し出される見取り図を見て、ちんぷんかんぷん。 「地図が読めない……から、迷子になる……」 開き直って、見取り図をしまう。 うん、教室がいっぱいあるところに行けば、良い。 簡単なこと。 1年3組って言ってた。うん、覚えた。 目指す、1年3組。 大丈夫。 迷ったら人に聞きなさい、って言われてるから、誰かに聞けば良い。 うん、そう。 俺はそう自己解決してから、職員室を後にした。 自分の破滅的な迷子っぷりを全く考えずに。
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