登校初日

8/14
前へ
/452ページ
次へ
ゴンッと鈍い音と共に、相手のうめき声が聞こえた。 相手はそのまま崩れ、足を押さえてのたうち回る。 「ううう、くぅ、クッソ……がぁ……!」 「は、はぁ……これ」 咄嗟に手に掴んだ棒状のものの正体は、鉄パイプだった。 偶然手に入った。 これで、ナイフの人の足を思いっきりぶつけた……多分、物凄く痛い、と思う。 現に、ナイフの人は、右手に持ったナイフを握り締めながら辛そうに俺を睨んでる。 怖い。 思わず、鉄パイプを構えた。 「……危ない……から、ナイフ」 「うるせぇ!! 殺してやる殺してやる殺してやる!」 「!!」 ナイフの人は急に俺に向かって、ナイフを投げ付けてきた。 あ、これ、危ない。 思わず、ギュッと目を瞑る。 痛いの、我慢出来ない。 キンッ。 と、何かが弾いた音。 何? 目を開ければ、ナイフは回転しながら飛んで……俺の左側奥へと落ちた。 落ちた? 首を傾げるのと、声が聞こえたのは同時だった。 「いやー、流石に見逃せませんでした、よっと!」 瓦礫を掻き分けて、机の上に飛び乗ってきた、見ず知らずの黒髪の、同じ制服を着た、人。 優しげな笑みを浮かべたまま、俺、と地面に転がったままのナイフの人に手を上げた。 「どうも、お邪魔致します」 「? お邪魔、されます……?」 「はい、ありがとうございます。実は先程から拝見、いや、一部始終見させて貰っていました。あ、見物料取るのとか無しにして下さいね? 勝手に始めたのはそちらなんですから」 饒舌に話しながら、その黒髪の人は、コツコツ、とこっちに歩み寄ってくる。 それからナイフの人の足を踏みつけた。 え? 何で、踏みつけた? 「1本目のナイフを投げた直後、うつ伏せになって倒れてましたよね? いけませんよ、負けたのにまだ続けるなんて」 「っ……てめぇ……!」 「それに、そのナイフ。刃渡りが20㎝強……ルール違反ですよね。カッター以外の刃物は禁じられてますし。それに、相手を殺そうと何度もしてましたねー? はい、それもルール違反でしたよね?」 ニッコリ。 黒髪の人は笑顔のまま、ナイフの人の足をぐりぐり踏みつける。 そこ、さっき俺、鉄パイプで殴ったとこ……わざと?
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4347人が本棚に入れています
本棚に追加