登校初日

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手を引かれたまま、校舎に着いた。 すごい、着いた。 「ありがとう」 「いえ、助けられて良かったです」 手を離して貰って、辺りを見渡す。 「そうだ。まだ名乗ってませんでしたね。僕は、遠野静です。君は?」 「凩八雲」 「八雲くん……では、親しみを込めて、やっくんと呼んでも良いですか?」 「ん、良い。……静、で良いの?」 「勿論」 おぉ……今日話してくれた人で、名前知ったの、これで二人目。 すごい。 そこで、またお腹が、鳴る。 ひもじい。疲れた。 聞こえたのか、静が笑う。 「お腹が空いていらっしゃるんですね、やっくん」 「うん」 「空腹状態であの動き……ふふ、やはり、僕の見る目は間違っていないようです」 「……何が?」 静の言葉に首を傾げれば、静は指をピッと立てた。 「僕は、先程の戦闘訓練……と言いますか、奇襲された時、ずっと観察していました」 「そうなんだ」 「えぇ。君が俊敏に何度も回避や足元を攻撃する様は、見ていて実に気分が良い。それに、鉄パイプを手にいれるまでは素手……臆せず戦う姿、痺れてしまいましたよ」 「?」 それで、何が言いたいの? 静の言葉がわからない。 理解してない俺に気付いた静は、ニッコリ笑って右手を差し出してくる。 「僕と、相棒になりませんか、やっくん」 「……相棒?」 「そう、相棒です」 「何で」 意味がわからず問い返せば、静は「生徒手帳を見てないのですか?」と返してくる。 生徒手帳? 「戦闘訓練など、個人で戦うのが辛い場合は、徒党を組んでも良いそうなのです」 「徒党?」 「簡潔に言いますと、仲間。その方が、ランクも上がりやすいですし、戦いも楽になるそうですよ」 「仲間、に……なるの?」 「駄目でしょうか?」 「良いよ?」 「……疑問で返されると、どちらなのか少し判断に困るのですが……」 苦笑する静の手を握る。 「静が……俺と、なりたいなら、良い……と、思う。俺、よくわからない。だから、静が好きに、する。それで、良い」 「……やっくん。許諾の返事と、受け取っても?」 「良い」 「ありがとうございます。では、僕はやっくんのサポートを致しましょう。わからないことがあれば、僕がお教え致します」 「ん…ありがとう」 まだ、学校のこととか、よくわからない、でも、静と仲間になった。 みたい。 これから、静に聞こう。
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