4347人が本棚に入れています
本棚に追加
手を引かれたまま、校舎に着いた。
すごい、着いた。
「ありがとう」
「いえ、助けられて良かったです」
手を離して貰って、辺りを見渡す。
「そうだ。まだ名乗ってませんでしたね。僕は、遠野静です。君は?」
「凩八雲」
「八雲くん……では、親しみを込めて、やっくんと呼んでも良いですか?」
「ん、良い。……静、で良いの?」
「勿論」
おぉ……今日話してくれた人で、名前知ったの、これで二人目。
すごい。
そこで、またお腹が、鳴る。
ひもじい。疲れた。
聞こえたのか、静が笑う。
「お腹が空いていらっしゃるんですね、やっくん」
「うん」
「空腹状態であの動き……ふふ、やはり、僕の見る目は間違っていないようです」
「……何が?」
静の言葉に首を傾げれば、静は指をピッと立てた。
「僕は、先程の戦闘訓練……と言いますか、奇襲された時、ずっと観察していました」
「そうなんだ」
「えぇ。君が俊敏に何度も回避や足元を攻撃する様は、見ていて実に気分が良い。それに、鉄パイプを手にいれるまでは素手……臆せず戦う姿、痺れてしまいましたよ」
「?」
それで、何が言いたいの?
静の言葉がわからない。
理解してない俺に気付いた静は、ニッコリ笑って右手を差し出してくる。
「僕と、相棒になりませんか、やっくん」
「……相棒?」
「そう、相棒です」
「何で」
意味がわからず問い返せば、静は「生徒手帳を見てないのですか?」と返してくる。
生徒手帳?
「戦闘訓練など、個人で戦うのが辛い場合は、徒党を組んでも良いそうなのです」
「徒党?」
「簡潔に言いますと、仲間。その方が、ランクも上がりやすいですし、戦いも楽になるそうですよ」
「仲間、に……なるの?」
「駄目でしょうか?」
「良いよ?」
「……疑問で返されると、どちらなのか少し判断に困るのですが……」
苦笑する静の手を握る。
「静が……俺と、なりたいなら、良い……と、思う。俺、よくわからない。だから、静が好きに、する。それで、良い」
「……やっくん。許諾の返事と、受け取っても?」
「良い」
「ありがとうございます。では、僕はやっくんのサポートを致しましょう。わからないことがあれば、僕がお教え致します」
「ん…ありがとう」
まだ、学校のこととか、よくわからない、でも、静と仲間になった。
みたい。
これから、静に聞こう。
最初のコメントを投稿しよう!