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「では、まず教室に……そう言えば、やっくんのクラスは何処でしょう?」
静に聞かれた。
大丈夫、ちゃんと、覚えた。忘れてない。
「1年3組」
「あ、僕も同じクラスですよ。やっくんにお会いしたことなかったですね? こんなに可愛い子がいたら、見逃すはずないのに」
「3日、遭難してた…から?」
「あぁ、欠席者はやっくんだったんですね。納得致しました」
「良かった」
静が納得して。
「そうと決まれば」と声を上げられ、「行きましょうか」と続けられたので頷く。
やっと、目的地に、行ける。
良かった。
静と並びながら廊下を歩く。
耳を澄ませば、遠くで喧騒が何ヵ所も聞こえてくる。
「静」
「はい、何ですか?」
「今、戦闘訓練……みんな、してる?」
「あぁ、そのことでしたか。はい、午後の授業は全て訓練の時間ですからね。皆さん、意気揚揚と争っていらっしゃることでしょう」
「……しなくて、良いの?」
「やっくんが、ですか? そうですね、まずはルールを覚えてからでも、遅くはありませんし」
そう言いながら、静は足を止める。
顔を上げると、プレートに『1─3』。ここ、1年3組?
静が教室のドアを開けると、誰もいなかっ……あれ、一人いた。
窓側、真ん中らへん。猫背の人、こっちに背を向けてた。
静を見ながら、その人に指を差す。
「あの人……」
「彼ですか……彼は入学してからずっとあぁですね。何かを作っているように見受けましたが、関わらなくて良いと思いますよー」
「そう、なの?」
「僕は、関わりたくありませんね」
「そっか」
笑顔で、はっきりした拒絶。
多分、本当に関わりたくない、みたい……静が嫌な人なら、今は、気にしない。
静に手招きされて、一番前、真ん中の席を引かれて「どうぞ」と言われた。
座るの?
座る。
俺が座ると、静はニッコリ笑って、机の前に立った。
「では、まず簡単にこの学校の授業形態について、お話させて頂きましょう」
「うん……お願い、します?」
「はい、畏まりました」
静は笑ってから、ブレスレットを弄ってモニターを出すと、時間割を映し出す。
おぉ、そんな機能も。
「先程も話しましたが、午後は全て訓練になります。そして午前は基礎5教科+保健体育、選択科目となっておりますねー」
「なるほど」
勉強は午前だけなんだ……良かった。
勉強、得意じゃない。
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