腹が減っては戦は出来ぬ

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静と手を繋ぎながら歩く。 うん? 「静……手」 繋いだ、まま? 引っ張ると、静が意外そうな顔する。 「嫌でした? やっくん、迷子になるかと思いまして」 「嫌、じゃないけど……子供みたい。恥ずかしい」 ぶんぶん振る。 ちっちゃい子みたい。ちょっと、恥ずかしい。 そう教えると、静は笑って手、離してくれた。 「それは気付かず、申し訳ありません。やっくんの表情が変わらないので、恥ずかしがっているとは露も思わず」 「うん。あまり…動かない、方。でも、ちゃんと喜怒哀楽、出来る……今は無理」 「そうでしたか。やっくんの笑顔を見ることを、今後の目標にして行こうと思います。絶対に愛らしいと思うので」 「? ……別に、普通。静、の笑顔…の方が、可愛い」 「な…………っ!」 瞬間、静の頬がボッと赤くなった。 風邪? そのまま口元を手で隠して、顔を背けられる。 ? 俺、変なこと、言った? 「静?」 「ちょ、ちょっと、待って下さい? やっくんの予想以上の男前さに動悸でどうにかなってしまっていますから」 「……ごめん?」 「大丈夫、やっくんは気にしなくて大丈夫です。ただその、不意討ちだったので、落ち着くまで待って下さいねー……?」 顔の前で手をパタパタした静は、息を吐いてから「もう、大丈夫です」と、少し照れた風に言った。 「良かった」 それから肩を並べて、歩く。 お腹、鳴いた。 鉄パイプを杖にして、歩く。 便利。 「う……」 「あとちょっとで売店ですから、辛抱出来ますか?」 「うん……」 疲れた。お腹空いた。寝たい。 欲求いっぱい。 静が背中に手を回して、押してくれる。 おぉ、楽。 「そこの二人、待つのである!」 不意に、後ろから声。 静と一緒に振り返る。 長い髪を1つに結った、眼鏡の人。竹刀を上段に構えてた。 ……どういうこと? 「……まずい」 静が何かに気付いて、そう呟いた。 ? 静、何か知ってる? 見上げると、静は苦笑する。 「やっくん……執行委員会です」 「? ……こっわーい?」 「そう、こっわーい人たちの集まりの!」 「何の話をしているか!」 眼鏡の人が声を荒げて、竹刀をぎゅっと強く握った。見えた。 何で、この人怒ってるの?
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