腹が減っては戦は出来ぬ

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静がいなくなって、ぽつんと佇む。 お腹、鳴る。 ひもじい。 「……売店」 静が、行っててって言った。 売店で待ってたら、静が来る? 行くの? 行く。 静と一緒に歩いてた方に向き直り、鉄パイプを杖にしながら歩く。 カツン、カツン。と金属音が虚しい。 「……静、大丈夫、かな」 こっわーい人たちに、会いに行った静。 怖がってない? 心配。 肩を落としながら歩く。 と、前から陽気な歌声が聞こえてくる。 「愛とー勇気だけがーとーもだっちさー!」 聞いたことあるような、ないような。 間奏も鼻歌で歌ってる声に釣られて、向かってみる。 「くぅー、ぼっち感をポジティブに表現したMソング、毎度思い出すだけで躍動感パねぇー!!」 両腕を頭で組んで、前を歩くその人。 一人でゲラゲラ笑いながら、足を止めて急に振り返ってきた。 「!」 「追い掛けて来ちゃったのはー? おっ、見たことない顔、はけーん!」 「ゲッツ!」と言いながら、ビシッと両手の人指し指を向けてきた、真っ赤な髪のにんまりした顔の人。 もしかして、俺に、気付いてた? 赤毛の人はフラフラ体を揺らしながら歩み寄って来て、顔を物凄く近くに寄せてきた。 長身なのか、身を屈めて目線を合わせてくる。 「はーじめましてー、なんつって。何々、つかそれ鉄パイプじゃね、超イカすんだけど」 「ちょうイカす……?」 「使ってる奴見たことねーってこーとー。つか、お前何1年? じゃあオレ、年上だからヨッロー。ま、1年なんて今日初めて見たけどなー。何たって謹慎4日だったし? つって、本当は1週間だったけど、エスケープゴーゴー」 「え……うん?」 何か、意味わからないこといっぱい言われて、わからない。 日本語……? そこで、またお腹鳴る。 赤毛の人は目を丸くして、すぐににんまり笑う。 「腹減ってんの?」 「うん」 「ウケるウケる。でも、そんなお前は超ラッキー! 左に見えますのがー、売店でーす!」 「じゃーん!」と言われて左に顔を向けると、ガラス張りの一室の中には色んな物が置いてある棚が、いっぱい。 コンビニの、ちょっと大きいバージョン? 中を少し覗く。 人がちらほらいる。
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