腹が減っては戦は出来ぬ

6/12
前へ
/452ページ
次へ
そのままカウンターに来たお兄ちゃんは、どかりとカウンターに身を乗せる。 「オヤジー。アレくれよー、2つなー」 そう言って奥に声を掛けるお兄ちゃんの、制服の裾を引っ張る。 「何?」 「あ? あぁ、まぁ見てなさいって。裏メニューって言うの? まぁ、オレしか頼めねーんだけど、これマジうめぇから」 「?」 首を傾げるのと、奥からおじいちゃんが顔を出したのは同時で。 それから紙袋をお兄ちゃんに渡した。 「ほいよ、まさやん」 「おぉ、これこれ。んじゃま、あんがとなー」 「ご贔屓なー」 お兄ちゃんは左手首のブレスレットをレジの機械に翳すと、ピロリンと音が鳴って、数字が表示された。 『¥-500』。 「? 今ので……お金?」 お兄ちゃんの裾を引っ張ったまま聞けば、「あぁ」とブレスレットを撫でた。 「金、生で貰ったらさ、管理大変じゃん? だから、金は全部電子マネーらしいぜ。この学校にいる間はな」 「電子マネー……」 「そーそ。んで、こいつを翳すと支払い出来んの。金は毎週末振り込まれるし、カツアゲみたいな金銭トラブルってーのも出来ないからな」 「すごい」 また、新しい情報。 お金は、電子マネー……全部、このブレスレットで何でも、出来る。この学校……すごい、ハイテク。 感動してれば、お兄ちゃんに手招きされる。 近くに設置されたベンチ。 お兄ちゃんがそこに座ってた。 「おいで、可愛い弟よ」 「うん」 隣に腰を降ろす。 「ほら、やるよ」 紙袋から1個何かを取り出したお兄ちゃんが、俺の前に差し出してきた。 ホカホカした、茶色い、楕円形の、それ。 「お焼き……?」 「ピンポーン。あそこのオヤジ、昔たい焼きとか売ってたらしくてな。んで、それを知ったオレが裏メニューにさせた訳。たい焼きよりお焼きのが上手く作れるってんで、これな訳。アンダースタン?」 「美味しそう」 「よし、食せ!」 「いただきます」 一口、噛みつく。 口の中に広がる、生地の柔らかさと、甘さがしつこくないアンコ。 「……美味しい」 「だろー。また食いたくなったら、お兄ちゃんに頼むが良い」 「お兄ちゃん……ありがとう」 お礼を言うと、「可愛い弟のためだから当たり前田慶治!」と意味わからないこと言われた。 お兄ちゃんの言葉、大半、わからない。
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4347人が本棚に入れています
本棚に追加