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そのままカウンターに来たお兄ちゃんは、どかりとカウンターに身を乗せる。
「オヤジー。アレくれよー、2つなー」
そう言って奥に声を掛けるお兄ちゃんの、制服の裾を引っ張る。
「何?」
「あ? あぁ、まぁ見てなさいって。裏メニューって言うの? まぁ、オレしか頼めねーんだけど、これマジうめぇから」
「?」
首を傾げるのと、奥からおじいちゃんが顔を出したのは同時で。
それから紙袋をお兄ちゃんに渡した。
「ほいよ、まさやん」
「おぉ、これこれ。んじゃま、あんがとなー」
「ご贔屓なー」
お兄ちゃんは左手首のブレスレットをレジの機械に翳すと、ピロリンと音が鳴って、数字が表示された。
『¥-500』。
「? 今ので……お金?」
お兄ちゃんの裾を引っ張ったまま聞けば、「あぁ」とブレスレットを撫でた。
「金、生で貰ったらさ、管理大変じゃん? だから、金は全部電子マネーらしいぜ。この学校にいる間はな」
「電子マネー……」
「そーそ。んで、こいつを翳すと支払い出来んの。金は毎週末振り込まれるし、カツアゲみたいな金銭トラブルってーのも出来ないからな」
「すごい」
また、新しい情報。
お金は、電子マネー……全部、このブレスレットで何でも、出来る。この学校……すごい、ハイテク。
感動してれば、お兄ちゃんに手招きされる。
近くに設置されたベンチ。
お兄ちゃんがそこに座ってた。
「おいで、可愛い弟よ」
「うん」
隣に腰を降ろす。
「ほら、やるよ」
紙袋から1個何かを取り出したお兄ちゃんが、俺の前に差し出してきた。
ホカホカした、茶色い、楕円形の、それ。
「お焼き……?」
「ピンポーン。あそこのオヤジ、昔たい焼きとか売ってたらしくてな。んで、それを知ったオレが裏メニューにさせた訳。たい焼きよりお焼きのが上手く作れるってんで、これな訳。アンダースタン?」
「美味しそう」
「よし、食せ!」
「いただきます」
一口、噛みつく。
口の中に広がる、生地の柔らかさと、甘さがしつこくないアンコ。
「……美味しい」
「だろー。また食いたくなったら、お兄ちゃんに頼むが良い」
「お兄ちゃん……ありがとう」
お礼を言うと、「可愛い弟のためだから当たり前田慶治!」と意味わからないこと言われた。
お兄ちゃんの言葉、大半、わからない。
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