腹が減っては戦は出来ぬ

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普通のより、ちょっと大きいお焼きを食べた。 おぉ、満たされた。 「空腹回避……満足」 「そりゃ良かったわね、お兄ちゃんは弟の危機を助けられて嬉しいわーアァンッ」 「……オカマ?」 「お兄ちゃんなのにお姉ちゃんとか斬新じゃね? ま、想像以上にキモかった、もーやんねー」 「うん」 その方が、良いかも。 紙袋をグシャグシャにしてるお兄ちゃんの袖を掴む。 「お兄ちゃん」 「どーした愛しい弟よ。まだ食い足りんのか、卑しん坊め」 「違う……本当に、奢って貰って……良いの?」 「あ?」 「タダ……悪い」 出会ったばかりの人にそこまでして貰うのは、気が引ける。 お兄ちゃんは、俺の言葉を聞いて「ほほぅ」と意地悪そうに笑いながら、顎に手を当てた。 「つまり、お兄ちゃんにタダで奢って貰うのは悪いよー的可愛い弟の発想が爆発か? そーかそーか、お礼に何かがそんなにしたいのかー?」 「うん」 「そんじゃー仕方ねーよな? 何か貰えるなら貰っちまうのが、ギブアンドテイクな世の中ってもんだ。どれ」 そう一人で納得したお兄ちゃんは、俺の後ろに手を回すと、そのまま首に添えてグイッと引き寄せてきた。 「!」 目の前に、お兄ちゃんの顔。 口に、何か濡れてるもの、当てられてる。 「……ま、お焼き1個分は、こんなもんだな」 ペロッと舐められた。 口を。 「────っ!!!?」 そのまま口を押さえてお兄ちゃんを見上げると、「お、顔真っ赤」とゲラゲラ笑われる。 何……した! 「な、なん……舐めた!」 「いや、タダじゃ悪いってつったろ? だから仕方ねーじゃん、ペロッと行っちゃう。柔らかかった、ごちそーさま」 「や、やだ……」 「舐めたのが? いやいや、もう過去には引き返せねーよ。それが世の摂理ってもんさ。いーじゃん、減るもんでもねー。男にペロッとされたくらいで」 「う」 そ、そうなの? 舐めたくらいなら、どうってこと、ない? ……わからない。 でも、お兄ちゃんが「違ぇねー」と自信満々に言う。 「ほら、これで奢ったのチャーラーヘッチャラーにしてやっから、な。気に病んじゃあいけねーよ」 「う、うん?」 「よーし、いー子いー子」 頭、撫でられる。 ……でも、こんなこと、人にされたの初めて。 ビックリ、した。
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