腹が減っては戦は出来ぬ

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お兄ちゃんに頭撫でられてたら、眠くなる。 そうだ……静、来る。 寝たら、ダメ。 「あ。そいやー、オレってばうっかりさん! 可愛い弟の名前を聞くのを忘れておったわ。教えてごらん、弟よ」 「凩八雲」 「八雲……か。八に雲だよな、字」 「うん」 「じゃあ、ハチと呼ぼう」 「何で?」 「知らねーの。ニックネームは愛着が沸く! そして何よりっ、このニックネームは、世界にも感動をもたらした日本犬のニックネームでもあるから!!」 「犬……」 「いーじゃんいーじゃん。ハチ可愛いじゃん。ハーチー。ハチー? お手ー」 「わん」 「ぶはっ、ドツボ!!!!」 手のひらにポスッと手を乗せたら、お兄ちゃんは吹き出した。 汚い。 「やー、ダメだー。ハチで行かなきゃ損するわー。ハチって呼ぶからな? 絶対だぞ? オレがウソ言ったことあるか?」 「さっき」 「違ぇねー!」 「でも、良い。ハチでも」 初めて呼ばれた。 面白そう? うん、面白い。 「お兄ちゃんは?」 「えー、オレー? お兄ちゃんでいーじゃん。万国ハチのみ共通でお兄ちゃんって呼べばいーじゃん。やだやだー、名前教えてお兄ちゃん以外で呼ばれるの、やーだー! なんつってー、3年の有賀将門! 仲良い奴には専らまさやんって呼ばれてます! でもハチは気軽にお兄ちゃんって呼ぶんだぞー」 ピースしながら名乗った。 まさやん……でも、お兄ちゃんって呼ばなきゃダメ? ……良いや。 「うん」 頷けば、「ハチは可愛いなー。首輪付けていー?」とか聞いてくる。 何で? 「……そこで、何をしている」 凛とした声が、廊下に響いた。 顔を上げれば、眉間に皺を寄せてこっちを睨んでる、りょーすけ先輩。 さっき、ぶり。 でも……怒ってる? 首を傾げれば、隣でお兄ちゃんが「あー!」とおどけた声でりょーすけ先輩を指差した。 「あれあれー。そこに居わすのは、オレの超マブダチなつぶらなヨシマサくんじゃーん! やっほー、4日ぶりー!! 感動の再会だなー、嬉しくて涙も出ねーよ!」 「黙れ。俺は円谷良将で、お前の友達でも何でもない」 「ヒデー。濃密な関係のく・せ・に☆オエー! キモー!!」 「…………」 お兄ちゃんが喋る度に、りょーすけ先輩の眉間の皺、深くなる。 えっと……仲、悪い?
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