腹が減っては戦は出来ぬ

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お兄ちゃんは指に何かを引っ掛け回しながら、俺の怪我を見る。 ……あれ、鍵? 「掠っただけだな。何だっけ、ナイフ投げ付けられたんだっけ。相手は曲芸でもやってんのかよー、なんつって。ま、舐めときゃ治んじゃね?」 「治るか」 「はーん? 信じてねーの? 試してみっか?」 「そう言って怪我を舐める魂胆だろうが、俺の前でそんな真似は出来ないと思え。八雲、絆創膏を持っているから、貼ると良い」 「……ありがとう」 りょーすけ先輩から絆創膏を貰う。 でも、お兄ちゃんの鍵が気になる。 じーっと見てたら、お兄ちゃんが「んー?」とニヤッと笑った。 「どーした、ハチ。お兄ちゃんハンサム過ぎてごめんなー、なんつって。そこのお兄さんが怖いんだなーしゃーねーなぁ、委員長サン怖ぇーよなー」 「…………」 「? 違う、それ」 「あ? これ?」 指を差すと、お兄ちゃんは回してた鍵をつまみ上げる。 「あぁ。何か刃物に厳しーだろ、この学校。そんなんで、お兄ちゃんの七つ道具そのいーち、何の変哲もねー鍵ー! 至近距離なら物を裂いたり刺したり出来るすっぐれものなのデース!」 そしてそのままポケットにしまう。 鍵で服、裂いた……裂けるものなんだ?? ところで、何の鍵? ……良いか。 「七つ道具……あとの6つは?」 「あらあら、メーよハチ! そこでヨシマサくんが聞き耳立ててんじゃーん、言えねーな言えねーよ」 「良将だ。……お前の武器など興味がないから安心しろ」 「またまたー。つーか武器じゃねーし。ただの便利なアイテムだっつーの」 「武器……違う?」 「ま、なるっちゃーなるけど、鍵で戦うとかどんな漫画のキャラですかー。ちゃんと鍵で戦いてーなら複数持って鉤爪っぽくすんのが妥当じゃねー知んねーけど」 ? じゃあ武器じゃないってこと? それをあと6つも持ってる? ……変なの。 首を傾げてると、りょーすけ先輩がブレスレットから画面を出してた。 「俺だ。有賀を捕捉したい、援護を頼む」 「げげーっ、ヨッシーのあほんだ! 援軍呼ぶとは卑怯なりよ! つーことでハチ、またなー」 「え……あっ」 「っ、有賀!!」 頭を押さえてきたかと思えば、額に唇を押し当ててから、お兄ちゃんは「逃げるが勝ちってな」と逃走する。 のを、やや遅れてりょーすけ先輩が追い掛ける。 ……何で、額にぶつかってきたの? 始終、意味わからないお兄ちゃんだった。
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