バトルロワイアル・チーム戦(前)

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(SIDE:円谷) 有賀が出てきたことで、隣で観戦していた宍戸が背を向ける。 「宍戸」 「見なくてもわかんだろ」 「何だ、八雲の時は真剣に見ていたと言うに」 「……」 目を凄める宍戸は舌打ちを溢し、「当たり前だろ」と珍しく肯定が返ってきた。 「どの程度育ってんのか確かめた」 「あぁ、お気に召したか?」 「……まだだな」 宍戸はそれだけ言い、踵を返してさっさと行ってしまったが、成る程な。 まだ手離す気が無いとは。 歓声が上がるステージは確かに宍戸の言う通り、結果は目に見えている。 俺はステージ下、アンチ側の方へと目を向ける。 赤来陽毅……ステージを見ずにひたすら視線を何処かへ送っていた。 視線の先は、反対側のステージ下。 追ったそこに、八雲が遠野静の耳元に手を当て何か話しているところだった。 「(密談をするのなら、何もこんな時でなくとも)」 と思った。が、案外理に叶っている。 周りはほぼ全員ステージで城田を卓球のラケットと言うふざけたもので追い詰める有賀に集中している、この状況。 本当に、八雲は頭が悪くはないようだ。 「(それで、有賀も卓球のラケットなんてものを選んだんだろう)」 城田のデタラメな動きを完全に読み、面の部分で弾きつつ無駄なモーションを入れてギリギリ躱しているように見せ付ける。 時間稼ぎと遊びも大概にしろ。 有賀が真面目にしているのは見たこともないが、分かりやすいまでの実力差。 「くそ、くそくそくそ! 馬鹿に、してる!」 城田も流石に気付いていたのか、屈辱に顔を赤らめ大振りになる攻撃にバック転し、 「お、遊んで欲しかったと思っててめんご! んじゃま、終わっか!」 「っ、ひ!」 足を着いたと同時に今までラケットを左手に持ち替え、 「雪Gと遊びたかったミトクンにはしっかたねーから特別にこれなー」 右肩を城田の胸部に密着し、ラケットを持った左手を下から直角に上へと突き上げた。 カッと、歯が噛み合ったような高い音が響き、城田の顎が上を向いたままゆっくりと、体が後ろへ揺れる。 「卓球版アッパーカット! なんつって!」 気付けばラケットを持っていない有賀がステージ上から観衆にピースを向けている内に、その後ろで城田が仰向けに倒れた。 と同時にステージの有賀へゴミが投げつけられるのを見、八雲へ視線を向ければ話終えていたのか心配した様子で有賀を見上げていて、含めて有賀に不快感が募ると言うのに。
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