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次に目を覚ました先は。
真っ白い天井。
あれ……屋内?
「知らない…天井」
「アニメが好きなのか?」
「うん?」
独り言だと思って呟いたのに、声が返ってきた。
顔を向ければ、静かに読書をしてる黒髪のお兄さんが。
「……アニメ、見ない」
「そうか」
「うん」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ここ、何処?」
上体をよっこらせと起こすと、お兄さんは本を閉じて顔を上げた。
切れ長の目と合う。
「翼翔学園内の保健室だ。校門前で倒れている生徒がいると報告を受け、君をここまで運んだ」
「中は、真っ黒くない……寝てた、だけ……でも、ありがとう?」
「どういたしまして。以降、行き倒れていることのないように。クラスと氏名を確認させて欲しい、生徒手帳の提示を」
「? 持ってない……」
答えれば、直ぐ様左腕を捕まれて、袖を上げられる。
痛い。
「……君は、この学園の生徒ではない……?」
「招待状、きた」
携帯機器からモニターを出して見せると、「本物だな」と返ってきた。
「俺……遭難してた。3日。迷子で」
「島で?」
「島で」
「……入学式に、欠員が一人出たと聞いたが、君のことだったのか……」
「疲れて、寝てた。起きたら、ここにいた……びっくり」
「……つまり、君はまだ生徒手帳も学園の規則も知らない状況なのか。疑ってすまなかった」
「良い」
引っ張られた腕を離して貰い、擦る。
あぁ痛かった。
「遭難か……腹は減ってないのか?」
「果物でお腹、壊した……それより、お風呂」
「大丈夫か? 風呂なら寮の各部屋に付いてはいるが、生徒手帳が無ければ入れない」
「どうしたら?」
出来れば早く入りたかった。
お兄さんを見上げて尋ねれば、お兄さんは少し考える素振りをしてから俺の腕を掴んだ。
「ついて来ると良い。俺の部屋のシャワーを貸そう」
「良いの?」
「構わない。困っている生徒を助けるのが、俺の使命なのだから」
「カッコいいね?」
「誉め言葉が疑問系だと、喜びにくいが。君にすれば誉めているのだな、ありがとう」
お兄さんは「立てるか?」と肩に腕を回して、俺を立たせる。
ここまで歩いてきたから歩けるのに介護されちゃってるみたいだ。楽だからそのままお兄さんに身を預けてみる。
おぉ、楽。
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