登校初日

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校舎から出て、ちょっと歩いた場所にあるビルのような建物。 これが、寮みたい。 お兄さんはそのまま中に入って、ロビーを過ぎてエレベーターに乗り込む。 俺は壁にもたれ掛かった。 「ふぅ」 「シャワーを浴び終わったら、何か簡単なものを作らせよう」 「いい。そこまで、いらない」 首を横に振る。 出会ったばかりの人間に、ここまでよくして貰うのは後味が悪くなりそう。 もうベッドに運んで貰って、それからシャワーも借りるのに。 充分過ぎるくらいだ。 「そうか」 お兄さんが苦笑したのと、エレベーターが止まったのは同時で。 それから俺はまたお兄さんに引かれて歩く。 それから一室のドアの前でお兄さんが止まり、左手首のブレスレットを翳すと解錠音が聞こえた。 「すごい」 素直な感想を溢すと、お兄さんはブレスレットを見せてきた。 「全校生徒に与えられている、多機能な生徒手帳だな。生徒手帳としての機能は勿論、寮の部屋の鍵、学園内見取り図、生徒間の連絡手段などなど、様々な機能を登載している。身に付けられるため、紛失も阻止出来る」 「優れもの……全員持ってる、すごい」 「君にも配られるはずだ。さ、中へどうぞ」 「お邪魔…します」 促され入った部屋は、必要最低限の生活用品しかない整った部屋だった。 何となく、お兄さんはきっちりした人なのかと言う印象を抱く。 「シャワールームはここだ。服は……ボロボロだな。制服はMで良いか?」 「え……」 「制服はすぐ支給される。予備はたくさん設けてあるらしい……何せ、戦闘訓練ですぐ駄目になる」 「なるほど」 「タオルなどはここに置いてあるから、ここにあるものは好きに使って良い」 「……ありがとう」 「君は……さっきも思ったが、ちゃんと礼を言える子だな」 笑みを浮かべられて、お兄さんはそれから出て行った。 お気に入りのパーカーだけは丁寧に畳んで、その上にヘッドホンを置く。他の服は全部脱ぎ捨てた。 それからシャワーを浴びる。 気持ちいい。生き返る。 「ふぅ……」 身体中の汚れを取り去ってそこそこにシャワールームから出た。 それからタオルで全身を包まってから、寝そべってゴロゴロする。 「失礼するぞ……もう出たのか…って、一体何をしているんだ、君は」 「芋虫で、身体拭く」 「…………」 盛大なため息を吐かれた。
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