4328人が本棚に入れています
本棚に追加
/452ページ
校舎から出て、ちょっと歩いた場所にあるビルのような建物。
これが、寮みたい。
お兄さんはそのまま中に入って、ロビーを過ぎてエレベーターに乗り込む。
俺は壁にもたれ掛かった。
「ふぅ」
「シャワーを浴び終わったら、何か簡単なものを作らせよう」
「いい。そこまで、いらない」
首を横に振る。
出会ったばかりの人間に、ここまでよくして貰うのは後味が悪くなりそう。
もうベッドに運んで貰って、それからシャワーも借りるのに。
充分過ぎるくらいだ。
「そうか」
お兄さんが苦笑したのと、エレベーターが止まったのは同時で。
それから俺はまたお兄さんに引かれて歩く。
それから一室のドアの前でお兄さんが止まり、左手首のブレスレットを翳すと解錠音が聞こえた。
「すごい」
素直な感想を溢すと、お兄さんはブレスレットを見せてきた。
「全校生徒に与えられている、多機能な生徒手帳だな。生徒手帳としての機能は勿論、寮の部屋の鍵、学園内見取り図、生徒間の連絡手段などなど、様々な機能を登載している。身に付けられるため、紛失も阻止出来る」
「優れもの……全員持ってる、すごい」
「君にも配られるはずだ。さ、中へどうぞ」
「お邪魔…します」
促され入った部屋は、必要最低限の生活用品しかない整った部屋だった。
何となく、お兄さんはきっちりした人なのかと言う印象を抱く。
「シャワールームはここだ。服は……ボロボロだな。制服はMで良いか?」
「え……」
「制服はすぐ支給される。予備はたくさん設けてあるらしい……何せ、戦闘訓練ですぐ駄目になる」
「なるほど」
「タオルなどはここに置いてあるから、ここにあるものは好きに使って良い」
「……ありがとう」
「君は……さっきも思ったが、ちゃんと礼を言える子だな」
笑みを浮かべられて、お兄さんはそれから出て行った。
お気に入りのパーカーだけは丁寧に畳んで、その上にヘッドホンを置く。他の服は全部脱ぎ捨てた。
それからシャワーを浴びる。
気持ちいい。生き返る。
「ふぅ……」
身体中の汚れを取り去ってそこそこにシャワールームから出た。
それからタオルで全身を包まってから、寝そべってゴロゴロする。
「失礼するぞ……もう出たのか…って、一体何をしているんだ、君は」
「芋虫で、身体拭く」
「…………」
盛大なため息を吐かれた。
最初のコメントを投稿しよう!