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腹が減っては戦は出来ぬ
静に、いっぱい聞いた。
ら、お腹がまた、鳴った。
「……ひもじい」
「あぁ、やっくん、お腹空いていたんでしたね!」
「うん……意識朦朧……頭、いっぱい……お腹、空っぽ……」
「長々と話してしまいましたからね。わからなくなったらまたお教え致します」
「うん……お願い?」
そこで鳴る、チャイム。
顔を上げると、「訓練終了ですねー」と静が笑った。
え、もう?
「……100分、早い……?」
「やっくん。そうでもないですよ? 僕がC地区の方に向かったやっくんを目撃してから今までで、ザッと50分でしたね。だから、前半の50分はやっくんは如何お過ごしだったのでしょう?」
「え……っと?」
迷子に、なる前?
えっと……学校、着いた。寝た。
起きた。りょーすけ先輩に、会った。
シャワー…借りて……職員室……
「あの時間……も、戦闘訓練……時間」
「おや、思い至る節があるようですね」
「うん……りょーすけ先輩、助けて、くれた……」
「りょーすけ先輩? ……リョウスケ? …………そうですかー、優しい方に助けて頂いたんですね」
「うん……静、も……優しい」
「っ……やっくん!!」
口元を両手で押さえて、静が呼んできた。
何?
「はぁ……。やっくんが可愛すぎて、すっかり骨抜きにされてしまいそうですよ……」
「骨、抜くの? 俺」
「あ、物理的ではないので、ご安心を。さーて、訓練も終わりましたし、寮へご案内致しましょう」
「良いの?」
両腕を上げて伸びをする静、首を傾げて聞き返すと、ニッコリ笑われた。
「本当は食堂に連れて行きたいのですが、残念なことに食堂は7時、12時半、18時、の各1時間毎にしか解放されていませんからね。まだ3時半ですから、入れないのですよ」
「うぅ……お腹空いて……動けない……」
ちょっと、疲れた。
3日遭難、疲れる、かなり。
寝た時間、わからないけど、まだ疲れてる。
いっぱい聞いて、頭いっぱい。
それにお腹空いて、無理。
「でしたら、僕が何か調達して来て差し上げますよ。お菓子でも良いですが?」
「……え?」
「売店に何か売っていたはずです」
「売店……俺、も」
「やっくんも行きたいですか?」
「うん……一緒に」
「えぇ、勿論ですとも」
静が笑顔で手を差し出してきたので、掴む。
売店、楽しみ。
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