腹が減っては戦は出来ぬ

1/12
4322人が本棚に入れています
本棚に追加
/452ページ

腹が減っては戦は出来ぬ

静に、いっぱい聞いた。 ら、お腹がまた、鳴った。 「……ひもじい」 「あぁ、やっくん、お腹空いていたんでしたね!」 「うん……意識朦朧……頭、いっぱい……お腹、空っぽ……」 「長々と話してしまいましたからね。わからなくなったらまたお教え致します」 「うん……お願い?」 そこで鳴る、チャイム。 顔を上げると、「訓練終了ですねー」と静が笑った。 え、もう? 「……100分、早い……?」 「やっくん。そうでもないですよ? 僕がC地区の方に向かったやっくんを目撃してから今までで、ザッと50分でしたね。だから、前半の50分はやっくんは如何お過ごしだったのでしょう?」 「え……っと?」 迷子に、なる前? えっと……学校、着いた。寝た。 起きた。りょーすけ先輩に、会った。 シャワー…借りて……職員室…… 「あの時間……も、戦闘訓練……時間」 「おや、思い至る節があるようですね」 「うん……りょーすけ先輩、助けて、くれた……」 「りょーすけ先輩? ……リョウスケ? …………そうですかー、優しい方に助けて頂いたんですね」 「うん……静、も……優しい」 「っ……やっくん!!」 口元を両手で押さえて、静が呼んできた。 何? 「はぁ……。やっくんが可愛すぎて、すっかり骨抜きにされてしまいそうですよ……」 「骨、抜くの? 俺」 「あ、物理的ではないので、ご安心を。さーて、訓練も終わりましたし、寮へご案内致しましょう」 「良いの?」 両腕を上げて伸びをする静、首を傾げて聞き返すと、ニッコリ笑われた。 「本当は食堂に連れて行きたいのですが、残念なことに食堂は7時、12時半、18時、の各1時間毎にしか解放されていませんからね。まだ3時半ですから、入れないのですよ」 「うぅ……お腹空いて……動けない……」 ちょっと、疲れた。 3日遭難、疲れる、かなり。 寝た時間、わからないけど、まだ疲れてる。 いっぱい聞いて、頭いっぱい。 それにお腹空いて、無理。 「でしたら、僕が何か調達して来て差し上げますよ。お菓子でも良いですが?」 「……え?」 「売店に何か売っていたはずです」 「売店……俺、も」 「やっくんも行きたいですか?」 「うん……一緒に」 「えぇ、勿論ですとも」 静が笑顔で手を差し出してきたので、掴む。 売店、楽しみ。
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!