1/3
240人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ

 人は、己と敵対する者を《鬼》と呼んで忌む習性がある。 それは悪魔でも、魔神でも同じこと。 理解出来ぬ者、得体の知れぬ者、逆らい歯向かう者、異形の者、病める者、異人、異文化、異教徒… (みずか)らと様相を(こと)にする者全てを、『鬼』と呼んで忌避(きひ)するのだ。 嘗て、東北の地は蝦夷と呼ばれて蔑まれた。 そこには鬼に属する蛮族が棲み、思う様、跳梁跋扈していると信じられて来た。 中央政権に従わず、独自の政治思想と文化を誇った北の民族を『まつろわぬ民』と呼んで、常に討伐の対象にして来たのである。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!