─肆─

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馨は、そんな珠姫が苦手だった。 彼女には、何もかも見透かされている様な、独特の『圧』がある。 自分が、何か間違いを犯しているのではないかという、奇妙な強迫観念に苛まれて、ちっとも安らげない。 全てに於いて完璧過ぎて、人間味に欠けるのである。 ──とは言え。 荒吐鬼は、そもそも半人半鬼なのだから、人間味溢れ過ぎている馨の方が、異端なのかも知れないが…。 「でもさぁ。そこは、同じ荒吐鬼同士。もっと親密になって良いんじゃないの?」 そう言う晶に、馨はウンザリと嘆息して言う。 「親密?珠姫さんと?? やめてよ。」 「馨は、珠姫さんが嫌いなの?」 「嫌いじゃないよ。苦手なだけ。」 「そんな事言っても、どの道、結婚するんでしょ?なら、そろそろ腹を(くく)った方が良いと思うけど…??」 無遠慮にものを言う晶に、馨は、眉を八の字にして訴えた。 「やだよ!珠姫さんと会ったら、俺は、あの人を抱かなきゃならない。会う度に求められるんだ。荒吐鬼の『結婚』は、人間同士の結婚とは違う。次代の後継者を産む為に、ただ体を合わせるだけの儀式だよ。なのに晶は、珠姫さんと会って、愛の無いSEXをしろって言うの?」
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