─壱─

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 極めて喧嘩腰の怒声が、冷えたリビングに響く。だが、いくら待っても家主の返事は無かった。  俊也は、またひとつ舌打ちをする。 憤然と肩を怒らせて見渡す室内は、呆れる程散らかっていた。  床と言わず、テーブルと言わず…とにかく、目に付く場所の全てに、大小様々な種類のレゴ・ブロックが散乱している。 赤、青、緑、黒、黄色。 そうした鮮やかな原色のブロックに混じって、小さな人形や木、タイヤ、ドア、信号機等々…ジオラマを造る為に使われる細かなパーツが雑然と置かれていた。  俊也は、うんざりと溜め息を()く。 怨めしげな視線の先には、家主が暇に飽かせて造ったのであろう、巨大な『レゴ恐竜』が鎮座ましましていた。 「…T-レックスか。好きだな、相変わらず。」  身の丈1m半もあるそれを視界の端に見ながら、俊也は二階へと続く階段を昇る。その先には、今日も朝寝を決め込むつもりの暢気な家主が、お気に入りの枕を抱えて眠りこけていた。
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