240人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
ログハウスの二階は、主に寝室として使われている。簡素な造りの其処は、部屋というより、ロフトに近いスペースだ。あまり高くない天井に頭をぶつけない様、俊也は細心の注意を払って寝室のドアを押し開いた。
…果たして。家主の青年は、ベッドの上でダンゴムシの様に体を丸めて眠っている。リビング程ではないにしろ、此方もかなり雑然としていた。大小色とりどりのレゴが散らばり、足の踏み場も無い。
俊也は、脱力した。
この後、間違いなく手伝わされるであろう部屋の片付けの事を思うと、言葉も出ない。
家主にとって、この無数に散らばるレゴの山は、『宝物』なのだ。パーツ毎、大きさ毎、カラー毎に、きちんと振り分けて収納しないと厳しいダメ出しが入る。
『彼』は、いつもそうだ。
病的なまでの、物への拘り。
マニアックの域を遥かに凌駕する、飽くなき探求心。
独自の美学から構築された異様な収集癖は、見る者全てを瞬時に黙らせる威力を持つ。
極度に神経質なその性格は、時に、俊也の理解の範疇を越えた。そうして、片付けを手伝わされる度に、彼は報われない気分になるのである。
はぁ…と盛大な溜め息を洩らすと、俊也は家主のベッドに近付いた。
最初のコメントを投稿しよう!