─肆─

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桜庭珠姫(さくらばたまき)は、盛岡城主──南部家に仕えた、武将の末裔だ。荒吐鬼の力を以て、代々、盛岡藩の霊的守護を行ってきた一族である。 明治維新以降は市井(しせい)を退き、盛岡市郊外に移り住んだが、その後、土地資産家として成功した。 そうして、資産運用で財を成す傍ら、先祖伝来の秘法を用いて、当てもの(占い)や、祈祷の様な仕事も請け負っていた。 …とはいえ。人間との混血が進んだ所為(せい)で、桜庭家の荒吐鬼は、以前程の力を発揮出来なくなっている。 馨の血筋──蓬莱家に比べれば、やや霊力は劣っていた。 だが、時に劣性遺伝により、強い行神力を持って生まれて来る者もある。珠姫は、まさしく、それに当たる者だ。 蓬莱家とは因縁浅からぬ関係であり、荒吐鬼の血を絶やさぬ為にと、代々、婚姻の約束を取り交わしていると言う。 ──つまり。 二人は、生まれながらの許嫁なのだ。 珠姫は、馨より歳上の126歳。 眉目秀麗な才媛で、様々な知識に精通している為、彼女の元には、連日の様に人々が訪ねて来る。
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