【壱】

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「─失礼いたします。」 ゆっくりと歩みを進め、 親父の前に順に膝をつき、 正座した。 横では、同じく背筋を伸ばして俺を見据える兄、椶應の姿。 そして、 目の前には、父、裟霙。 「雹堊、お前を呼んだのはほかでもない。」 低く、重厚に響く声。 いつかは、来る。 そう言われ続けていたこと。 「──出家だ。」 「はい。」 俺自身は、 俺の物ではない。
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