シークレットオーガスト

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 最終日はあっという間に現れ、小森は咲崎の待つ場所に行く。待ち合わせ場所にいた咲崎はあの日買った服を着ていた。「今日はどこ行く?」といつもの調子で聞く小森に、咲崎は首を振り、分厚い封筒を渡した。 「どこにも行けないわ。楽しかったよ、嬉しかったよ、私の事を知ってくれて、ありがとう。バイトは、終わりです」  小森は気づいた。咲崎は涙を必死に堪えて話している事に。細く白い腕を掴むと冷たかった。「なんで、泣くの?」と聞くと咲崎はすんと鼻を鳴らし、「欲張りな自分に」と答えた。これで終わり、小森は「自分もだ」と言葉を続ける。 「俺、バイト代いらない。返す。もっとお前といたい、もっと知りたい。駄目?もう言うけど、キスとか、してぇ」  小森は初めて告白というものをした。初めて、真剣に。だが咲崎は悲しい顔のまままた首を振るのだった。 「ごめんなさい小森君。無理なの。私、手術受ける。これが最期の夏なの」
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