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咲崎は心臓が悪く、九月から入院すると言った。そして家族がいない事も初めて言った。ずっと一人でいたのは、辛いから、諦めなきゃ、そう考えてだった。後ろの席から小森の明るい髪を、明るい小森を見るのが好きだったと言った。過去形で、言った。
百万円分の秘密で恋を隠していた。
たった十七で、女で、一人で、全てを決めていた咲崎に小森は苛立った。選ばれたのが自分なのと、自分を諦める咲崎に苛立った。そうはさせない、と熱い喉を開く。
「キスしていい?」と聞くと咲崎は驚き、好きな相手にそう言われ頬を赤くする。「死ぬ私としたいの?」と皮肉な言葉はいつもの事。関係ない、今から知ればいい。
明日死ぬわけじゃない。小森は今の気持ちのまま、咲崎にキスをした。柔らかな唇は熱かった。「ドキドキし過ぎて、死ぬかも」と言った咲崎は可愛くて、生きていた。
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