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小森紺は校則違反であるアルバイトが教師にバレ、放課後説教をくらっていた。二度目で悪いとも思っていないので多少の罰くらい屁でもない、と夕陽に照らされる学校の廊下をズボンのポケットに手を突っ込み、鼻歌を歌いつつ、軽快な足取りで教室の扉を開けた。
小森は十七歳で、この学校の生徒だ。一言で表すと「チャラい」。明るめの茶髪はもちろん校則違反だ。そんな小森にも苦手なタイプの人間がいる。明らかに趣味が違ったり、教室に一人残っているコイツだったり、だ。
コイツとは同じクラスの、咲崎桃子。小森とは真逆の優等生で髪も黒い。きちんと着られた制服はぱりっとしている。成績優秀で容姿端麗、女にしては高身長、女子グループに属さない珍しい女子、という事くらいしか小森は知らない。だが校内や教室を一人で行動する彼女に対して可哀想などとは思わず、なんでかスゲェ女、と思った事があった、と小森は教室の扉に手をかけたまま思い返していた。
「あら小森君、呼び出し?」
ややハスキーな声。おそらくこれが小森に投げかけられた咲崎の最初の言葉、だったと思う。
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