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咲崎は部活や帰宅でで誰もいない教室によくいると言った。小森はもちろん帰宅部ですづさま教室から出る一人だ。バイトのおかげでこんな時間に学校にいるのも久しぶりだ。机の席が前、後ろだというのにロクな話もした事がない二人。
変な緊張に耐え切れず、小森は後ろの席である咲崎の机の上にあるお菓子に目をやった。広げられた袋の上に半分程減っているポテトチップス。
「食べていいよ」と言うので小腹も空いている小森に断る理由はない。咲崎は膝に本を置いている。「何してんの」と聞くと「読んでるの」と答えが返ってきた。このシンプルで冷たくもある答えは何なんだ。この空気は更に小森の居心地を悪くさせ、仕舞には苛苛させた。
顔だけは好みなのにな、と惜しむのだが咲崎は先程と同じ角度で本に目を落としている。そして意外な事に咲崎は小森に話しかけた。やかましく感じる同クラスの女子とは違う落ち着いた声に、小森は帰ろうとした足を止めた。
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