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「はぁ…ん?なんだあれ」
我が両親の面倒くささについて考えながら歩いていると、前方の曲がり角、生垣の横に黒い物体を発見した。
「……ははぁ。今度はそう来たか」
結論から言おう。あれこそが我が幼馴染、「在身戦」なのである。お前は黒いごみ袋を幼馴染と呼ぶのか?などと言う暴言は止めてもらおう。俺の精神は正常で、そしてあの黒いごみ袋は俺の幼馴染で間違いないのだ。
「今日は燃えるごみの日だぞ戦」
「…盲点だった」
三歩離れたところから呼びかけると、ごみ袋からが平坦な声で喋った。
「雹也…おはよう」
そしてごみ袋に足が生え、中から眠たそうな眼をした女の子が現れた。
「おはよう、戦」
控えめに言って美少女である。すれ違えば十人が十人振り向く美しさだ。こいつが我が幼馴染である。羨む気持ちは分かるぞ諸君。物語の中にしかいないような美少女の幼馴染。俺は恵まれている。であるならばと、そこまで分かっているのなら何故さっさと付き合うなりなんなりしないのか。諸君はそう言いたくなるだろう。
俺も男だ。そして年頃の男子高校生が異性の想いに鈍感なのはそれこそ物語の中だけである。戦が俺に好意を抱いているのは知っている。そして俺も戦の事が好きである。ここまではいい。なんなら戦には幼馴染の他にもう一つ肩書が付く。
それは「元カノ」である。
そう。高校一年の春から三か月間。こいつと俺は付き合っていた。こいつは幼馴染で元彼女という複雑な肩書なのだ。
別れた理由は少しありがちかもしれない。ある事件がきっかけで戦は俺に依存した。事件と言っても実は事件を起こしたのは俺の方で、戦をいじめていた奴らをボコボコにして病院送りにした。ただボコボコにしたわけじゃなく心の方も徹底的に叩き折った。当然、相手方の親から告訴するだのなんだのあったが、警察の捜査が入るや否や何故か相手の鞄から指紋べったりのナイフやスタンガンなどの凶器がボロボロ出てきて俺の正当防衛が成立。まあ凶器があっても過剰防衛気味だったが、そこは家がその筋にコネと言うか、恩があるんで、こっちが何もしない間に適当に処理してくれた。
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